当時「かりんとう」のイメージは
古くさいのひと言でした。

今から8年ほど前、その頃はかりんとうと言えば古くさいおじいちゃんやおばあちゃんが食べるイメージのお菓子でした。
若いスタッフを集めてブランド開発ミーティングをしても
「この時代にかりんとうは古くさいと思います」
「犬のウンチみたいだし、何か辛気くさいので売れる気がしません」
「堅い」「古くさい」「おばあちゃんがお茶に一回つけて柔らかくなってから食べる」
等々、とてもネガティブな意見が多く、ギフトとして使えるものなのか疑問視する声が飛び交いました。

麻布十番の喫茶店に潜み、
ターゲットたちの会話に耳を傾ける。

私は、いつも新しいブランド開発を行う際に、そのブランドは誰に愛されるべきなのかを考えることにしています。
マーケティング業界でターゲット設定とかペルソナとかいうやり方です。

大きな外資系の会社の仕事ではとっても分厚い市場調査の報告書が上がって来て、それを見ながらチームでディスカッションしたりしますが、ギフト菓子業界ではそこまでの大がかりな市場調査は行われないのが現状でした。

麻布かりんとの開発の時は私自身が麻布十番の街を歩き回りました。
新店舗開発の時は、街の空気を吸うことは大切だと考えています。不思議とどの街にも色があります。そしてその色に合わせて人が集まって来ます。
「人が街を造るのか、街が人を造るのか」どちらが先かわかりませんが、確実に存在する街の色を感じること・・・それは歩いて見ないとわからないことだと思っています。

私はある時、麻布十番の喫茶店に何時間か座り、隣でお金持ちそうな素敵でナイスな奥様たちの会話に耳を傾けていたことがあります。「彼女たちは一体どんな会話をしているのだろうか?」それが気になったからです。
麻布十番は都心の真ん中にあり外国の大使館など高級住宅地でもあるが、昔からどこか下町の香りがする街です。その不思議な街を歩き回りながら、私の頭の中には着実にターゲット設定が行われていきました。

やがて「素敵でナイスな奥様たち」というキーワードがプロジェクトミーティングで普通に使われるようになりました。
ターゲット設定については実際にオープンしてみて、意外なコトが起きたのですが、それはまた後で述べることにします。

感性のあるクライアントとの出会い

麻布かりんとの社長はなかなか感性に優れた人で、麻布かりんとのロゴマーク選定時も、実はどこかにありそうなありきたりな和風のロゴマークに決定しそうになっていました。クリエイティブチームが困惑していた時に、社長が「いろんな意見があると思いますが、今回はミニラの中尾社長にお任せしましょう!」と一任してくれた人です。
私はその一言を受けて「思い切った斬新なロゴマーク」を選ぶことができました。社長の一言があればこそあの印象的なロゴマークが使われることになり、思い切ったコミュニケーション戦略を創り出すことができたのだと思います。

「いいクライアントと出会うことも、いいブランド造りのためには必要」なことだと思います。